AI活用で失敗する理由は従来の品質管理と同じ
AIを活用した品質管理や継続的改善活動の初期段階で生じるつまずきは、実は品質担当者にとって驚くほど見慣れたものが多い。こうしたつまずきの要因として、AIベースの意思決定支援システムに関する研究で繰り返し指摘されているのは、データの質の低さ、不十分な問題定義、透明性の欠如、検証不足などだ。詳細は、nature.comで確認できる。
実証研究によると、AIベースの意思決定において信頼性を左右する最大要因は、データの透明性とデータの質だ。その影響力は、アルゴリズムの性能よりも大きい。これは、長年にわたる品質管理や継続的改善活動が示す以下のような教訓と一致している。
運用ルールを明確に定義しなければ、測定システムの信頼性が低下する
あいまいな問題設定は、分析を誤った方向へ導く
結論を検証しなければ、リスクが増大する
AIでこうした問題が解消できるわけではないが、早期に特定することは可能になる。そして、それは望ましいことだ。
継続的改善の視点から見たプロンプトエンジニアリング
AIに関する話題の多くは「プロンプトエンジニアリング」に焦点を当てている。それには理由がある。AIシステムから有用な回答を引き出すには、インプットを適切に構造化された設計にすることが極めて重要だからだ。プロンプトエンジニアリングは、技術的なスキルとして扱われることが多いが、実は継続的改善の基本的考え方と非常によく似ている。
ucstrategies.comに掲載された研究結果からも、構造化されたプロンプトを用いれば、基本モデルを変更することなく、AIの出力精度を20~30%向上させられることが分かる。こうした改善は、プロンプトの言い回しを工夫することで得られたものではない。明確なプロンプトを与えた結果なのだ。
品質管理や継続的改善の観点から言えば、プロンプトは強力な問題定義のような役割を果たす。プロンプトが定義するのは以下の項目だ。
- 目的
- 対象範囲
- 背景
- 望ましい回答の基準
これらの要素が欠けていると、人もAIも安定したパフォーマンスを発揮することはできない。
品質管理に適したプロンプト作成モデル
継続的改善と品質管理の考え方をAI活用に取り入れるための実践的な方法として、以下の4つの要素でプロンプトを構成するというやり方がある。
- 役割:AIが担うべき立場や責任
- 制約条件:対象範囲、前提、法規制上の制限、データソースなどの境界条件
- 考慮事項:ばらつき、顧客の声(VOC)、重要品質特性(CTQ)、業界動向、規制要求事項などの背景情報
- 検証:前提条件、不確実性、裏付けとなる証拠の提示要求
このアプローチは、AI活用の先進企業が公開している公式なAIガイダンスとも一致している。こうした企業は、AIから信頼できる出力を得るためには、目的、制約条件、評価基準を明確に設定することが不可欠だと強調している。
さらに注目すべきは、この考え方が、継続的改善のベテラン実践者の思考と同様であるという点だ。
