資格が基礎知識の習得を示す有効な指標であることに変わりはない。しかし、技術が急速に進化する環境においては、資格だけではもはや即戦力性の指標として十分とは言えなくなっている。
近年の品質保証分野では、資格と能力を区別する傾向が強まっている。資格は規格や手法を理解していることを示すものだが、真の意味での即戦力性には、さらに以下の要素も必要である。
・システム思考
・新技術への適応力
・データ駆動型ツールの操作スキル
・部門横断的な環境における協働型問題解決能力
こうした動きを踏まえ、一部の企業では、正式な資格と併せて実践的なスキルを評価する社内コンピテンシー体系の導入が進んでいる。このバランスの取れたアプローチの背景にあるのは、知識の確認には試験だけでなく実践を通じた評価が必要だという考え方だ。
戦略的資産としてのメンター制度
あまり積極的に活用されていないかもしれないが、スキルギャップを埋めるための最も効果的なツールのひとつは、体系的なメンター制度だ。めまぐるしく変化する環境では、組織の仕組みに関する知見や組織の考え方に触れる経験が人材の成長のために重要な役割を果たす。
近年、品質保証部門では、経験豊富なエンジニアが新人を指導するメンタープログラムを正式な制度として設ける動きがある。具体的には、以下のような内容が含まれる。
・リスク評価手法
・故障モード解析
・自動化設計レビュー
・監査準備戦略
・問題発生後の根本原因調査
メンター制度では、受動的な研修とは異なり、能動的な問題解決の過程でリアルタイムに知識を伝達できる。また、品質部門における組織文化の継承やリーダーの育成にも、メンター制度は効果的だ。
規制当局の監視が厳しく、製品リスクが大きい業界では、メンター制度を通じて個人のパフォーマンスだけでなく、組織の強靱性も強化することができる。
品質保証部門の強靱化
今日、人材の即戦力性について考える場合には、不確実性も考慮しなければならない。サプライチェーンの混乱、規制の変更、技術革新などにより、業務内容が短期間で変わる可能性があるからだ。
強靱な品質保証部門に共通する特徴を以下に挙げる。
・部門横断的な研修が行われている
・物理的な検査システムとデジタルシステムの両方に対応できる
・データに基づく意思決定を実践している
・品質、技術、業務の各部門間で明確な意思疎通を図る仕組みがある
新たな技術や変化する要求に適応できるチームを育成することで、
品質部門全体として、偏った専門性への依存を低減し、長期的な安定性を向上させることができる。
技術加速時代のリーダーに求められることとは
究極的には、スキルギャップを埋めるためには、技術面だけでなくリーダーシップの面からの対処も必要となる。そのために品質保証部門のリーダーがやるべきことは、部内の能力不足がボトルネックとして顕在化する前に、どのような能力が今後必要になるかをあらかじめ把握することだ。
こうした攻めの対策の例としては、以下のようなものがある。
・継続的研修プログラムに費用を投じる
・新興技術を実験的に試用するよう奨励する
・品質戦略とデジタルトランスフォーメーション構想を統合する
・即戦力性を戦略的KPIとして測定する
能力ニーズに後追い的に対応する人材育成しか行わない品質部門は、今後もスキルギャップに苦しむことになる。一方、戦略的計画に能力開発を組み込めば、その組織には高いレベルの業務運営を持続的に実現する力が備わってくる。
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