実践事例:DMAIC研修充実のためのAI活用
この思考様式の一致を実感したのは、AIの利用拡大に対応するため、リーンシックスシグマの研修資料を更新しているときだ。筆者は、単に「AIツール」という項目をカリキュラムに追加するのではなく、従来のDMAIC(Define、Measure、Analyze、Improve、Control)手法について、その根本的な方法論を変えず、AIで有効性を高める方法はないかと考えていた。
これについて検討するため、継続的改善の考え方を意図的に反映した構造化プロンプトを用いてAIアシスタントと対話した。
役割:継続的改善におけるAI活用に精通した「マスターブラックベルト」という役割をAIに与えた。さらに、自身の履歴書もアップロードし、筆者の経歴や、研修の開発・実施における役割についてAIにより深く理解させた。
制約条件:範囲は次のように明確に設定した。
DMAIC手法のみを使用する。
DMAICの各フェーズと関連ツールは1フェーズずつ扱う。
実績のあるリーンシックスシグマツールのみを使用し、新規ツールや実験的ツールは使用しない。
AIの使用目的は、ツール活用を支援することであり、担当者の判断を代替することではない。
考慮事項:AIには次の事項を考慮するよう求めた。
世界で継続的改善の担当者や研修講師がAIをどのように活用しているか
AIが特定業界のみではなく業界横断的に継続的改善に活用されている事例
研修で取り上げるのに適した実用的な活用方法であること
検証:最後に、AIが提案した内容を裏付ける参考文献やリンクを提供するよう要求し、筆者がAIの提案を確認・検証できるようにした。
その結果AIから得られたのは、AI機能を列挙しただけの一般的なリストではなく、DMAICフェーズごとに体系的にまとめられた提案だった。具体的には、以下のような内容である。
AIが支援可能なリーンシックスシグマツール
各ツールの活用をAIがどのように支援できるか(具体的には、パターン認識、仮説生成、顕在的・潜在的利害関係者の特定、戦略、解決策のアイデア出しなど)
活用可能とされる各ツールに対応したプロンプトの例
検証段階において、AIによる提案のうち十分な根拠があるものと、注意や追加検討が必要なものとが明らかになったことも、注目に値する。また、筆者は、ツールとAIを組み合わせて使う際のメリットとデメリットおよびリスクを示すように求めた。それにより得られた結果は、そのままコピーして使うというより、むしろさまざまな気付きを与えてくれる示唆に富んだ提案だった。これが励みや助けとなり、継続的改善の研修へAIを組み込む作業は大幅に効率化できた。
最も印象的だったのは、AIが生成した内容そのものではなく、そのプロセスだった。AIによる出力の質は、プロンプトの質を直接反映していた。プロンプトの試行錯誤を重ねるほど、出力結果は良くなっていったのだ。プロンプト作成にはPDCA手法を用いた。(PDCA:Plan-Do-Check-Act)
この経験を通じて、従来からある教訓を再確認できた。つまり、明確な定義、対象範囲の設定、十分な検証が重要だということだ。これは分析を行うのが人間であろうとAIであろうと変わらない。PDCAを用いてプロンプトを繰り返し改善していくことが、AIの出力を最適化するために効果的であることが分かった。
